Latest Entries

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消せます。

3/28のゼミ(現象論)

 2年生を交えての、2回目のゼミでは、超伝導の現象論として、主に London と Ginzburg-Landau の理論を扱いました。

・現象論とは
 根底にある原理からは導けない(事が多い)が、現象をよく説明する(簡潔な)モデルのこと。

 超伝導における「現象」とは、前回のゼミで紹介されたように、完全導電性、完全反磁性、同位体効果、エネルギーギャップの存在、等のことで、その他パラメータ等の実験値を説明する事も、現象論に期待される説明すべき事柄です。

ここでは数式は出しませんが、主要な式は Wikipedia にも載っているので、参照してみるとよいでしょう。また今回のゼミの参考文献は Wikipedia と、INTRODUCTION TO SUPERCONDUCTIVITY です。

■London 方程式
 London方程式は2式あり、それぞれ完全導電性と完全反磁性を表しています。つまり、抵抗力を受けずに電流が流れる事、磁束密度は超伝導体の奥にいくにしたがって指数関数的に減衰することを表します。
磁束密度の侵入深さ(penetration depth)λを導入しました。λの実験値は超伝導電子密度が全電子密度より少ない事を示唆しています。特定の条件を満たせば London 方程式は1つの式にまとめられることにも触れました。

・PIppard による拡張(nonlocal electrodynamics)
 臨界温度以下のエネルギーに相当する電子が主に超伝導に寄与するだろうということと、位置と運動量の不確定性関係から、特徴的な長さのスケールが存在することを述べました。
 Pippardは、ある点での物理量(電流など)が、その点以外の物理量(ベクトルポテンシャルなど)にも依存するように London 方程式を拡張しました。非局所性を取り入れたという事です。

・熱力学的臨界磁場
 臨界温度あるいは臨界磁場以下で超伝導に転移するのは、その方が自由エネルギーが下がって安定になるからです。磁場が無い状況での、超伝導と常伝導のエネルギーの差を condensation energy と呼びます。試料に全く磁束が侵入していない状況を考えた時に、磁束を斥けるための energy と、condensation energy が、等しくなるような大きさの磁場が、熱力学的臨界磁場(あるいは単に臨界磁場)です。

 磁場を0から強くしていくことを考えましょう。実際の実験の状況では、試料の表面にはある程度磁束が入るので、試料の形状にも依って、熱力学的臨界磁場より小さい磁場や大きい磁場で超伝導状態が壊れることが多々あります。前者の場合、第一種超伝導体では intermediate state(中間状態)という状態になり、試料の一部は常伝導、一部は超伝導というふうになります。
 また、磁場をだんだん弱くしていく場合にも、熱力学的臨界磁場に達する前に超伝導核(超伝導になりはじめた部分)が形成されたり、熱力学的臨界磁場より下げてやっと超伝導に転移したりします。

■Ginzburg-Landau (GL) 理論
・複素数の秩序変数(order parameter)、擬波動関数 ψ というものを使って理論を記述。
 絶対値の二乗が超伝導電子密度を表す。
・仮定した自由エネルギーを、ψとベクトルポテンシャルAに関して変分し、
 Ginzburg-Landau 方程式を得る。
・GLの利点(London theory で扱えなかったこと)
 超伝導電子密度を変化させる程強い場に対する非線形な応答や、空間的に変化する超伝導電子密度を扱える。
・GLが有効な条件
 臨界温度に十分近い事 非局所性が重要でない事 ψやAの空間変化が急過ぎない事

・GL free energy
 ψは小さく、空間的にも緩やかに変化すると仮定し、自由エネルギーの形を仮定しました。

・GL 方程式
 前述のように変分し、二つの方程式を得ます。状況に応じて境界条件を設定し、必要によっては方程式を近似して、問題を解いていく事になります。

・coherence length ξ と  GL parameter κ
 ψの平衡値からのずれが、どれくらいの空間スケールで変化するかを表す量がξ、λとξの比(λ/ξ)がκです。常伝導の部分と超伝導の部分の境界を、domain wall といって、そこにはエネルギーがあります。κが小さいと、そのエネルギーは正であり、domain wall はあまり形成されませんが、κが大きいと、そのエネルギーは負であり、domain wall はたくさん形成されます。それが、第一種超伝導体と第二種超伝導体の違いです。
 その境界はκ=1/√2 であることが計算によって分かっています。

・fluxoid の量子化
 fluxoidという物理量を導入し、それが量子化されていることを述べました。
 Bohr-Sommerfeld の量子化条件を使う方法、ψが一価関数(同じ場所では同じ値をとる)であることを使う方法の二通りで示し、積分経路をλより深い所にとることにより、超伝導体を貫く磁束(flux)が量子化されることをみました。

3/22のゼミ

今日は2年生向けのゼミを行いました。全部で3回予定していて、その1回目です。今回は超伝導の概論と現象を取り扱いました。

まず、歴史的な側面からどのような超伝導物質があるかと超伝導現象を説明する理論について説明しました。超伝導物質としては金属、有機物、高温超伝導体として有名な銅酸化物系、最近はやりの鉄酸化物系があります。理論に関してはロンドン理論、GL理論、BCS理論の雰囲気ををごく簡単に説明しました。

次に、超伝導物質に関する現象を扱っていきました。超電導に特徴的な現象には、
i) 電気抵抗の消失
ii) マイスナー効果
iii)ジョセフソン効果
があります。電気抵抗の消失は転移温度以下では電気抵抗がほぼゼロになることです。

マイスナー効果は超伝導体に磁場をかけても超伝導体の中に磁場が入らないこと(完全反磁性)をいいます。外場をゼロから増やしていった場合は完全導体でも同じことが起こりますが、超伝導体は内部に磁場がある常伝導の状態から超伝導体にしても磁場を排除するという点で完全導体と異なります。

外部磁場を増やし続けるといずれは超伝導状態が壊れます。このときの磁場の大きさを臨界磁場Hcといいます。また、特に常磁性のある不純物が入っても超伝導状態は壊れやすくなります。

磁場の仕方には2種類あり、それによって超伝導体は第1種と第2種に分けられます。第1種超伝導体は超電導状態が壊れるまで完全反磁性を維持します。一方、第2種超伝導体ではある値Hc1より磁場が大きくなると部分的に磁場が超伝導体の中を貫くようになります。この状態でも超伝導状態は維持され、これを渦糸状態といいます。さらに磁場を増やしていくと、Hc2で常伝導状態に転移します。常伝導の時に電気抵抗が大きい金属が第2種超伝導体になりやすいという傾向があります。

超伝導体の比熱は非常に興味深い挙動を示します。特徴は転移温度Tcで比熱の値に飛びが出ることと、比熱への電子の寄与がAを定数、Tを温度としてexp(-ATc/T)の形で書けることです。前者は、Tcでの相転移が2次相転移であることを表し、後者は何らかのエネルギーギャップがあることを示しています。

エネルギーギャップの存在は、マイクロ波スペクトルをとったときにも確認できます。すなわち、特定の周波数以下の周波数のマイクロ波の吸収率はほぼゼロですが、それ以上では吸収率が上がります。

超伝導体に特徴的な現象には同位体効果もあります。これは、金属の超伝導体に対し、金属原子の質量によってTcが変化することをいいます。M^α Tc=一定の形になり、αが0.5付近になるものが多いです。これは、BCS理論で格子振動を介して電子がクーパー対をつくっていることにつながります。ただし、中にはαがゼロのものもあり、これは電子のバンド構造や電子同士のクーロン相互作用で説明されます。

超伝導体の輪を貫く磁束はh/2eを単位として量子化されることが分かります。これとマイスナー効果から、超伝導体を流れる環状の電流は永久に流れ続けることも言えます。

最後に、ジョセフソン効果についてごく簡単に触れました。ジョセフソン効果には直流ジョセフソン効果と交流ジョセフソン効果の2種類があります。いずれも2つの超伝導体の間にうすい絶縁体をはさんだ時に電流が流れることを言っています。前者は2つの超伝導体の間に電位差をつけないとき、超伝導体1から2にJ=Jo sin(θ2-θ1)の電流が流れる現象です。後者は2つに電位差をつけた時、電流がJ=Jo sin(δ(0)-4πeVt/h)となることを言います。交流ジョセフソン効果はe/hの精密測定に用いられます。

なお、このゼミはキッテル固体物理学の超伝導の章をベースに行いました。より詳細な議論、図表はそちらを参照すると理解が深まるでしょう。

GL方程式を用いた理論計算

昨夜からずっと,自宅のノートパソコンをフル稼働してabrikosov格子の渦糸構造についての理論計算をしていました.

まず,結果を2つ見比べてみてください.

c.jpg

b.jpg

綺麗な正方格子(上)と三角格子(下)ですね.
以下はこの「Abrikosov格子」や,超伝導現象そのものに対する簡単な説明です.

Alexei A. Abrikosovは2003年,Vitaly L. GinzburgやAnthony J. Leggettと共に,「超伝導や超流動の理論への先駆的な貢献」("for pioneering contributions to the theory of superconductors and superfluids")という業績によって,ノーベル物理学賞を受賞します.

彼は,その受賞理由となった1957年の論文の第一節で,GL方程式(以下に簡単に触れます)を近似的に解いて初めて第2種超伝導体の混合状態を議論したのです.

さらに議論を進める前に,超伝導の歴史を簡単に振り返っておきます.

1911年,Heike Kamerlingh Onnes (1913年ノーベル物理学賞受賞) によって超伝導が発見されますが,長らくその現象を説明する理論は得られませんでした.

1950年,現象論である「Ginzburg–Landau理論」が提出され,そして1957年にミクロからの説明とされる「BCS理論」がBardeen,Cooper,Schriefferの3人によって構築されたのでした.

これらのの理論は一部の超伝導体の物理的性質を非常に良く説明できますが,しかしこれによって超伝導現象に対する完璧な理解が得られたの訳ではなく,例えば高温超電導体などのについては未だ明らかになっていないことが多く残されています.

Ginzburg–Landau理論の根幹であるGL方程式の解の振る舞いは,あるひとつのパラメータによって特徴付けられますが,Abrikosovは,それまで議論されていなかったパラメータ領域の超伝導体を「第II種超伝導体」と呼び,その磁気的性質を議論します.
そしてこのタイプの超伝導体が「第I種超伝導体」とは非常に異なる振る舞いを示すことや,上部臨界磁場の近傍での渦糸格子の構造を予言したのでした.

その結論として,彼は上記に示した計算結果の画像(上)に示したような正方格子を予言します.三角格子の可能性にも触れていますが,前者の方がエネルギー的に安定であるという理由でそれは棄却してしまいました.

しかしここの議論には数値的な誤りがあり,三角格子の方がわずかに安定であることが1964年W.H.Kleinerらに指摘され,1967年にはU. Essmann and H. Traubleによって,実験からも三角格子が確認されることになったのです(下図).

essmann670.jpg
(http://www.fys.uio.no/super/vortex/より転載)

私たちは,この実験に使われた手法であるBitter法という手法を用いてこのAbrikosov格子の可視化実験を再現しようとしています.さて,次回の実験で成功することになるのでしょうか?

(渡辺)

実験4回目

2/19に4回目の実験を行いました。
今回は多くの2年生が参加してくれたので、(名目上)2年生主体ということで行いました。

さて、前回の実験では、資料に何か付いているのが見えました。
先生さらりと「前回はゴミがついていたから・・・」と言われてしまった可哀想な鉄のゴミ達。。。
しかしこの「ゴミ」が何だったのかを知るためには、超伝導体のおかれている状況を知らなければいけません。実は今まで使っていた装置は若干壊れていて、温度計がついていませんでした。更には、どれくらいの磁場がかかっているのかもわかっていませんでした。
そこで、今回はこれらの環境を知る術を整える事から始めました。

まず、温度計の装着です。
「温度計」といっても、普段使っている様なアルコール温度計などでは、液体ヘリウムなどの超低温にさらすと流石に個体になってしまうので使い物になりません。
そこで、「四端子温度計」というものを使います。
金属や半導体などは、温度に因って抵抗値が変化します。そこで、その抵抗値を計る事で温度を知る事ができる、というのが四端子温度計です。今回は半導体のものを用いています。
モジュラーにコードをつけるところから始まり、インサートのながーい棒にそってコードを沿わせ、その先っぽに温度計をつけます。(意外と奥の方まで壊れていたようで、結構時間を食いました)

しかし、これも実験開始直後になって接続が上手くいってない可能性が出て来たので、次回確認の必要がありそうです。

それから、磁場の測定。
これは、あらかじめどれくらいの電流を流すとどれだけ磁場がかかるのかを測定しておけばOKです。



さぁ!
実験開始です!
液体ヘリウムも入れたし、あとは冷えるのを待つのみ!


しかし
・・・・・冷えない。。。


もう夜の9時なのに・・・。



結局、液体ヘリウムを入れて試料を冷やす瓶の内部の管がつまってしまった事が原因のようです。
液体ヘリウムが入るところは2層あって、外側に液体ヘリウムを入れてから、内側に試料を入れた後で内側に液体ヘリウムを流し込むという構造になっているのですが、その内側へ流し込むための管が、おそらく空気が凍ってしまった事でつまってしまったのです。


なかなかうまくいかないものですね。。。


担当:正田

実験3回目

記事を書くのが遅くなってしまいすいません.

今日(1月28日)は実験3回目でした.2,3年生ともに試験期間中でしたが,前の実験の失敗の原因を特定しないまま1ヶ月近く放っておくのもどうかと思い,何とか実験にこぎ着けました.


前回の実験は,消えてなくなったはずのFe線が,なぜか溶けずにそのまま残ってしまっていた!という失敗に終わったのでした.
今回はその点を改善した後,2,3通りに電流値を変化させて実験してみる予定でした.


まず蒸着に関してですが,前回うまくいかなかったのは,もしかしたら使っていたFe線,タングステン線が悪くなっている,もしくは質が悪いからなのでは?ということで,
約5,000円の出費で新しいFe線,タングステン線を購入しました.


これで本当にうまくいくかは分かりませんでしたが,取り合えずやってみようと,

ヘリウムディテクターで真空度をチェックし,
クライオスタット(冷却器)にヘリウムを導入し,
......

と,ここまでは良かったのですが,ここからひょんなことで1時間程度手間取ることになります.


Feの蒸着は,タングステンフィラメントに電流を流して加熱することで,巻きつけておいたFeを気化させる,という方法で行います.

この電流量の調整が,今回の実験の鍵ですので,なるべく再現性よく実験を繰り返すために,プログラムを書いてPCから電流源を操作するように,と先生がおっしゃいました.

ここで僕らがLab Viewを普通に使えればそれで済んだ話だったのですが,

なんと先生が『フロッピーディスク』から『電脳組のBasic for windows 98』をインストールしはじめ,『説明書を片手に』,



(中略)


結局,かっこいい院生のかた(助教さん?)にLabViewで書いてもらいました.本当に感謝です.
次回までにLabViewの簡単な使い方をマスターしなければいけないようですね.


さて,気を取り直して実験再開です.

クライオスタットに測定装置を挿入し,
装置内部を真空引きした後,He雰囲気を作るためのHeを導入し,
磁場をかけ,
...

と準備をし,手動だった前回とは異なり今回はPCからLabViewで蒸着開始です!

...んで,実験終了.午後丸々かけて散々準備したのにも関わらず,実験自体は15秒もかからないのです.
早速温めて取り出してみました.

蒸着前後のサンプルの比較です.


蒸着前

exp3-1


蒸着後

090129YBCOX20_convert_20090209023855.jpg

なんだか激しく汚れてしまっています,,,が,良く見てみると,格子のような斑点が見えていませんか??


他のところを見てみましょう.

090129YBCOsquare100_convert_20090209024142.jpg

三角格子というよりは,正方格子のように見えます!
やった,実験成功だ!!

とおもいきや,実はこの格子,格子定数が50μm以上もあるみたいなんです.

このような大きな格子定数を実現するには,地磁気の10分の1程度の極微弱な磁場が必要ですので,
どうがんばっても,これはabrikosov格子ではありえない,ということでした.残念!


ではこれはなにが見えているのでしょうか?
あくまでも希望的観測ですが,これはやっぱり磁束格子が見えているんじゃないかと思っています.
理想的な条件を仮定して計算している理論的予想が適用できるほど,いい条件での実験ではなかったため,偶然大きな格子定数の格子が見えてしまったのではないか?

しかし,温度も外部磁場も測定できていない以上,推測の域を出ないため,なにを言っても無駄なわけです.

次回は,
*配線を作り直し,4端子温度計を取り付けること.
*コイルの校正を行い,印加した磁場が何Gaussなのか分かるようにすること.
などが課題です.今回はタイムロスが多く,1回しか実験できませんでしたが次回からは1日に何回も条件を変えてチャレンジできるようにしたいです.

渡辺